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2021年 08月 13日
京町家の現状と課題をまとめてみました。 批判を承知で、大胆な解決策も提示しています。 私は単なる工務店の経営者です。政治家ではありませんので、提案しかできません。一工務店の戯言と思われるかもしれませんが、改革に取り組まれる方の参考になれば幸いです。 京町家の現状 京町家の減少が止まらない。平成28年度の調査では京都市中心部で4万146軒と報告されているが、従前の調査から年800軒は減少している勘定だ。 その後は調査がされていないものの、加速度的な減少は続いているといえる。 インバウンドバブルが続き、京都市の宿泊施設拡充・誘致方針とあいまって令和2年度末には客室が5万6千室と5年で約2倍と爆発的に増えた。京都駅周辺の景色は一変し、ホテルラッシュに。小さい商店街の中にもゲストハウスが林立する。 京町家の解体には届け出が必要と言っても、皆勝手に解体している。実際町家だったかどうか調べようがないし、万一見つかっても罰金は5万円だ。 コロナ禍で観光客は激減したが、解体された京町家は元に戻せない。残った町家も、ひとたび地震が起きたら軒並み潰れ、ひとたび火災が起きたら軒並み延焼し、「やっぱり町家はダメだったね」と烙印を押さる。 そうなると、どこにでもある外観の住宅や店舗に変わってしまい、大好きだった京都の町並みは伝建地区に残るだけという惨状になるかもしれない。 これは、経済原理に街を委ね、無秩序な開発を許してしまった結果と言える。将来価値があるかどうかではなく、今どうやったら儲かるかを考えるのは、経済人の道理だからだ。 もちろん新景観法で外観や高さ規制が強化された。しかし、法律さえ守れば大丈夫と、ビルの1階にシャンプーハットのような庇を造ったり、色だけ合わせて外壁を塗る。それでも、当初は非難轟々だったようだ。自分の土地なのに好きなように建てられない、基準を超えたところに住む区分所有者はどこに行けばいいのなど。 日本は私権の制限が難しい。コロナ禍で思い切ったロックダウンができないのも同じ論理だ。マスク着用のように、同調圧力を待たないと上手くいかないのだ。 京都市の財政は破綻寸前である。市債残高は1兆3千億。借金を返済するための積立金である減債基金も使いこむ。観光客の激減、高齢者の増加、地下鉄東西線の不振などが指摘されているが、社寺からの固定資産税収入が見込めないことや、古い木造住宅が多いことも一因と言われている。 そうした中、京町家をはじめとする古い住宅に対する補助金がいくつも提示され続けている。部署、対象部位、申請のしやすさ様々だが、ざっと7~8種類はある。他の政令指定都市でここまで手厚いところはない。 一番手厚いのは1千万あるが、省エネのように数十万のものもある。後者でも事前申請から交付決定まで何度も足を運び写真や資料を準備しなければならない。こちらの手間もかかるが役所の手間も膨大だ。中には期間限定で募集される補助金もある。「知っている人だけ得をする」制度であるし、そもそも補助があるから改修しようというインセンティブになっているか疑問である。 京町家のたどる道 築100年経った京町家も度重なる改造や老朽化でそのまま住むわけにはいかなくなる。そうした時、選択肢は次の5つに分かれる。 1) 解体 まとまった土地であれば、一番お金になり手っ取り早い方法である。 路線価があがり、地上げ屋が日参したような地域だとなおさらだ。相続が発生すると、町家は切り売りできないので、現金がないと手放さなければどうしようもなくなる。妙心寺通り川井家住宅の解体、六角通り旧伴家住宅の居住棟の解体など。新町通りの川崎家住宅も風前の灯だ。 これを回避するには、「建物を解体しなくても困らない」工夫が必要だ。実現可能かは置いといて、例えば、 ・特別に宗教法人として認可する(固定資産税を回避) ・重要な町家の敷地を一種住専にする(建ぺい制約でビルが建たない) ・京都市が買い取って保存する(道路や橋の改修費に比べれば・・・) などが考えられる。 2) 収益物件に改修 ゲストハウスや飲食店に改修する。ここで収益をあげなければならないので、見えないところまで手をかけて直す必要がない。要は見栄え重視である。 大抵5~10年で投資回収出来る範囲しか手を付けないので構造はそのままである。また、木造にもかかわらず邪魔な柱や床は撤去して広い空間を確保したがるため、地震には弱くなりがちだ(特に飲食店)。 潰されるよりはマシだが、元に戻すには大変な労力がかかることにもなりかねない。これを防ぐには、やはり実現可能かは置いといて、例えば、 ・抜き打ち巡回し、既存不適格でも赤紙を張る(権限付与が必要) ・建築"半"確認制度を作る("半"検査済証を張って抜き打ちを免れる) ・構造を傷めた改修だとわかった場合、土地の固定資産税を倍にする などが考えられる。 3) 応急措置 全改修となると2~3千万はかかる。とりあえず傷んでいるところだけ継ぎ接ぎで直す。決断の「先延ばし」である。 京都は空き家か両親が住んでいるだけで、自分が帰るかどうかわからない場合や、そもそも跡継ぎがいない場合である。京都の企業に転職しようと思っても、街中はホテルや飲食店ばかりで企業がない。事務所も少ない。観光行政に偏重したツケがきている。 ただ、応急措置をしておくと、将来きっちり治すための布石になるので、大変重要である。ここをしっかりと支援しなければならないが、五月雨式の補助金は、知ってる人だけ得をする上に、役所のマンパワーも不要なところに使ってしまいもったいない。 特に大切なのは雨漏り・漏水・白蟻である。やはり実現可能かは置いといて、 ・台風通過後の罹災証明基準の緩和(雨漏りなくてもOKに) ・水道使用量が倍になった町家の強制修理(水道局との連携必要) ・シロアリ駆除剤を町内会に無償譲渡(防蟻協会との調整必要) さらに、町家に愛着を持ってもらうための方策として、 ・「出格子お掃除隊」の結成(市職員&NPOで町家の調査も兼ねる) ・町家が多く残っている町内の学術調査をする(建物を褒めちぎる) ・京町家の各種補助金を原資に、固定資産税を減免(不公平感の除去) ・町家にお住まいの方限定のイベントを実施(依怙贔屓して特別感を出す) などが考えられる。 全ての町家に適応できればベストだ。ただ、最大の問題は ・費用をどう捻出するか と ・技術者をどう確保するか と ・水回り部分の改築の法的整合性 である。 京都の場合地元金融機関の協力もあり、既存不適格でも、路地奥でも住宅ローンが組めるようになった。ただ、お金を借りれる人はいいが、そうでない人も大勢いる。京都は納税義務者の割合が43%と低く、空き家も10%を超えている(最近はゲストハウスの空きが増え更に悪化)。かといって、売りに出してしまうと、そのまま使ってもらえるかは買い手次第だ。残存する京町家の18%が看板建築で、良い建物だと思っていない持ち主も多い。 批判されるのを承知で書くと、「町全体を伝建地区にする」と解決する。しかし、ビルが建ち並ぶ景観で今更感がぬぐえない。それなら、実現可能かは置いといて、 ・看板建築復元運動 /京町家に詳しい設計士を10名雇用する。 /京都市職員と同行し、看板建築を調査、本来の外観を作図する。 /所有者と交渉。外観を復元する場合の予算を提示する。 ・相続時買取制度 /京町家を売却しないと相続税が払えない場合 /京都市(または外郭団体)が積極的に買取 /構造改修の上、適正価格で売却 ・京町家特別保存路地制度 /町家が多く残る路地を指定 /指定した内容で路地に面した外観を改修する場合に市が費用負担 /案内看板、消火設備なども同時に設置 くらいのお節介はしてもいいのではないかと思う。 また、京町家を改修する際、どうしてもトイレ棟が朽ちていたり、お風呂がなく止む無く増築したりといった事象が発生する。準防地域内のため建築確認を取らない増築がそもそも禁止されている中で、後ろめたい思いで隠れて工事をする事も少なくない。ここも、公明正大に工事ができればと切に願う。 5) 新築 京町家は一度解体してしまうと、京都市中心部では新築することができない。防火や耐震の問題があるからだ。しかし、そんなことを言ってると、京町家は減少こそすれ、増加に転じることはありえない。ここは、思い切って法律を度外視し、古い町並みに戻すように舵を取り直すことが求められよう。夢みたいな話だが、 ・京町家新築特区 /京都市の遊休地、古アパート敷地を転用 /都市計画を特別に策定(準防火にしないなど) /市であらかじめ区画割、町家プランを策定しておく /ここで新築される物件は、書類上昭和25年の新築としておく (あえて、既存不適格物件にしておく) のようなことができないものか。 住むための町家を残すために 「京町家を残そう」という総論は賛成されるが、「法律は守ってね」と各論で前に進まないことが往々にある。悪い業者もいるが、本当に町家を残すために頑張っている職人さんも多いのに、十把一絡げに扱われてしまう。こうして何の手立てもしないと、町並みはどんどんスプロール化され、無秩序に壊れていく。どこにでもあるような、でも法律に則った町並みになってしまう。 町を守るために私権を制限し、法律を改定すれば、損する人も得する人もでてくる。でも、軋轢から逃げていてはダメではないか。100年後、200年後の子孫のために、この町を良くしていきたいという想いを具体化していくことが求められているような気がしてならない。 ヨーロッパであれだけ立派な街並みが残っているのは何故なのか。車が乗り入れられない、スーパーや量販店に行くのも一日仕事だ。建物の外観も決められている。看板やエアコンも自由につけられない。自分の土地なのに。でも、そんな町が愛されるのは、他にない唯一無二の存在だから。京都もそうなってほしいと願う。 絵空事かもしれませんが、誰か本気で行政改革に取り組んでいただける方がでてこないかな~と、願っています。かなり伸びやかに書かせていただきましたが、そういう方の眼に止まれば幸いです。
by arakiblog
| 2021-08-13 09:22
| 京町屋(町家)とまちづくり
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